代表ブログ

依頼を、一件だけ断ったことがある

依頼を、一件だけ断ったことがある

コントリを立ち上げて間もない頃、取材依頼を一件、断ったことがある。

理由は、宣伝の色が強くて、経営者の想いを届けるという、コントリのコンセプトに合わなかったから。

当時、依頼の絶対数は、まだ少なかった。

「実績」が欲しかった時期に

2023年4月に独立してから、依頼が来るようになるまでには時間がかかった。しかも、届く依頼のほとんどは、正直に言うと「よくわからない会社」からだった。ウェブサイトを見ても事業内容が掴みにくい、検索しても情報が出てこない、そういう会社さんが多かった時期だ。

経営者としては、正直、実績として並べられる会社名が欲しかった。会社員時代、2011年から工場設備の調達で年間180億円ほどの商談に携わり、中小企業の経営者と話す機会を数多くもらった。その商談を通じて、経営者の想いに触れる経験を重ねてきた。30社をインタビューした経験もある。だからこそ、独立後の「よくわからない会社」ばかりの状況に、焦りに近いものがあった。

それでも、届いた依頼には、規模や知名度で扱いを変えずに向き合ってきた。単なる情報発信の代行ではなく、出会いの質を高める発信設計をするというのが、コントリの立ち位置だと考えていたからだ。

そんな時期に、コンセプトに合わない依頼を一件、断った。

数を追うなら、非合理な判断だった

正直に言うと、あの判断はだった。

依頼そのものが少ない中で、1件を自ら手放す。実績を積むことを優先するなら、受けたほうが、合理的だったんじゃないか。宣伝色が強いといっても、記事にすること自体は可能だったはずだ。目の前の実績を、みすみす手放したようなものだ。

それでも、コンセプトは曲げなかった。出会いの質を、量より先に置くと決めていたからだ。拡散力よりも、質の高い出会いを重視する。頭では分かっていても、依頼が少ない時期にそれを実行するのは、簡単なことじゃなかった。

この判断について、後悔はしていない。ただ、正しかったと確信していたわけでもなかった。実績が増えない焦りは、ずっと消えなかった。

無料だからこそ、選べる

コントリでは、経営者インタビューを無料で実施している。この方針を続けている理由の一つが、あの一件を断った経験にある。

対価をいただいて記事をつくる仕事なら、依頼を選ぶ余地は、もっと狭くなっていたと思う。無料だからこそ、コンセプトに合わない依頼を断るという判断が、経営として成立した。同時に、無料だからこそ「本当は合わない依頼でも、受けておいたほうがいいんじゃないか」という誘惑も、常にある。

一件を断ったあの時は、その誘惑に負けなかった、ということでもある。信頼は、こういう小さな判断の積み重ねの上にしか、乗らないんだと思う。

発信は、営業してくれる

先日、年商100億円を超える会社から、コントリのウェブサイト経由で取材依頼が届いた。

誰かの紹介ではない。うちの、他のインタビュー記事を読んで、届いた依頼だった。

これは、コントリにとって示唆的な出来事だった。発信設計を妥協しなかったことが、結果として、営業をかけなくても依頼が届く経路をつくっていた。あの一件を断った判断と、今回の依頼は、同じ一本の線の上にある。そう思っている。

量を追っていたら、この経路はできていただろうか。届く発信、つまり相手に伝わるところまで丁寧に向き合う積み重ねでしか、こういう経路はつくれないんだと思う。「伝える」は自分発信で、「伝わる」は相手起点だ。この二つの違いを意識して記事をつくってきたことが、遠回りのようで、実は一番の近道だったのかもしれない。

コンセプトを、経路に変える

経営者の想いを届けることにこだわり続けているのは、それが結果的に、コントリ自身の信頼を積み上げる一番の方法だと考えているからだ。中小企業経営者の想いが伝わらないことが、もったいないと思う気持ちが、コントリを立ち上げた原点にある。その原点を、依頼が少ない時期にも手放さなかったことが、今につながっている。

興味を持ってくださった経営者の方には、気軽にインタビューに応募してほしいと思っているし、社内の発信を仕組みに変えたいときは、ハッシンラボPremiumも一つの選択肢になると思う。

コツコツとした積み重ねだけが、遠くまで届く発信をつくる。一発の営業では、この経路はできなかった。

今でも、あの一件を断った日のことを、たまに思い出す。損をしたという感覚は、正直、今も消えていない。

それでも、また同じ場面が来たら、同じ判断をすると思う。

Contact

その想い、眠らせて
おくには惜しい。

取材のご依頼、発信のご相談、協業のお声がけ。どんな入口でも歓迎です。まずは気軽にお話ししましょう。